性自認とは、心が男性であるか女性であるか、もしくはそのグラデーションにおいて自分がどこに位置するのかと感じることです。全ての人には性自認があります。性自認が体と一致する人もいれば、そうでない人もいます。出生時にペニスのある体に生まれ自分を男の子であると認識する人や、出生時に腟のある体に生まれて自分を女の子であると認識する人がいます。このような性自認を持つ人を「シスジェンダー」と呼びます。逆に出生時にペニスのある体に生まれて女の子であると認識している人や、出生時に腟のある体に生まれて男の子であると認識している人もいます。このような人を「トランスジェンダー」と呼びます。
「ジェンダークィア」とは、男性でも女性でもない性別、もしくは男性と女性のどちらでもある性別、または男性と女性の組み合わさった性別の人のこと言います。「ジェンダーフルイド(ジェンダーの流動性)」とはジェンダークィアに似ていますが、ジェンダークィアとは異なるアイデンティティーです。自分の性別をどう感じるかが一定ではなく流動的であると感じている人もいます。ジェンダーフルイド(ジェンダーの流動性)であるということは、常に男性らしさと女性らしさの混ざり合った状態であると感じることや、日によってより女性らしく感じる日もあれば、男性らしく感じる日もある、とうい状態です。ジェンダーフルイド(ジェンダーの流動性)は、その人の生物学的性別とは関係がありません。
私たちは、自分の見た目を通して男性らしさや、女性らしさを表現します。この男性らしさ、女性らしさを表現することを、「性表現(Gender Expression)」といいます。性表現はその人が自分の性別に関して内面でどう感じているか、家族からの期待、社会からの期待や、その他の事項によって影響を受けます。性表現は、自分自身について深く知り、男らしさ、女らしさがその人にとってどの様な意味をなすのかを理解し、そして日常を通してどのように自己表現をしていくのかなどを通して変化していきます。
性自認と性表現はその人が好きになる対象と関係ありません。自分の恋愛・性愛がどの対象にあるのかは、「性的指向」という言葉で表します。
性役割とは、実際の、または世間から認知される性別に基づいて一般に適切であると期待される行動様式を示す社会的規範をいいます。両親、保護者、その他信頼を寄せられる大人として、性役割を押し付けることにより、子どもを傷つけてしまう可能性があることを知ることは大事です。例えば、男の子だから傷ついた時・悲しい時に泣かないように伝えることは、その子どもにとってあらゆる範囲の感情の抑制に繋がり、他人への共感する力を制限し得ることになります。性役割は、子どもや若い人がありのままの自分を受け入れる力を抑制する可能性があります。例えば、スポーツをしたがっている女の子に「おしとやかでいようね」と促すこともこれに当てはまります。明確であろうと微妙なニュアンスであろうと、性役割に沿った行動を子どもに促してしまうと、男の子・女の子どちらに対しても、強い不安感や自己に対する自信の無さ、ストレスと自己評価の低下を引き起こす可能性があります。
これら全てのことを念頭に入れ、私たち大人は、子どもを含める全ての人々の性別に関するアイデンティティーと自己表現の選択の多様性を尊重していくような形で、子どもをサポートしていくことが出来ます。
会話のきっかけづくり
性自認に関する用語は多いですが、あなたと子どもが言葉の定義を覚える必要はありません。重要なのは、子どもが、性自認や性表現がグラデーションであることを理解することです。また、自分の性別をどう捉え、どう表現するかは、他の人と違っていても不安がらなくてもいいということです。このような会話を通じて、子どもは安心して質問したり話をしてもいいと思えるような信頼関係をあなたと築くことができます。
性別やジェンダーに関する文化の違いについて話すこともお勧めします。子どもと一緒に、色んな文化における性表現や男らしさ、女らしさの定義(例えば、スコットランドのキルト等)を学ぶのも楽しい会話に繋がるでしょう。
例えば以下のような方法で、会話を始めることができます。